古い歴史を持つ漢方薬には、以前人々を脅かしていた疫病に対する処方も多数残されています。

西洋医学では、病気の進行を急性期、慢性期と分類することがありますが、東洋医学での分類はより細やかです。

病気の進行に応じて、太陽病→(陽明病)→少陽病→太陰病→少陰病 と名前が付けられていて、

太陽病は、風邪の引き始め、寒気や発熱、筋肉痛などを感じる時期です。

陽明病は、体がより強く病原体に反応している状態で、熱が出たりひいたり、首筋にジトっとした汗をかいたりします。

少陽病は、病気が体の奥に入りつつある状態ですが、まだ体は病気と闘おうとしています。

太陰病になると、病気の勢いが体力よりも勝ってしまった状態で、体を温めるお薬が必要になります。

少陰病では、更に病気が進行していて、強力に体を温める薬が必要になります。

 

今回佐賀で異常に増えていると感じている感染症は、どの段階の方にも目立った自覚症状がみられないのですが、

太陽病・陽明病 → 麻杏甘石湯

少陽病 → 大柴胡湯加麻黄

太陰病 → 六君子湯

少陰病 → 真武湯

で改善するようです。

 

インフルエンザの治療には、太陽病では麻黄湯、少陽病では柴胡桂枝湯を使うのが一般的ですが、

今回の感染症に使っている 麻杏甘石湯や大柴胡湯加麻黄は、それより遥に強力な薬です。

体がいかに侵入者に対して強く抵抗しているか、またそれ程強い薬を使わなければ治癒できない状態であることが伺えます。

 

これらの処方はエキス剤にもありますが、香り成分(気剤)が飛んでしまっていることもあり、効果が十分ではなさそうです。

生薬を使って作れば、2週間ほどの服用(風邪薬としては長い方ですが)で治療可能と感じています。

治癒後の再感染は、今のところなさそうです。