遠方からの親戚を囲んでの食事会が終わりに近づいた頃、父の職業を知っている上役の方が、明らかに父を見ながら話かけて来られました。呼ばれて父が行った後、母が”あなたも行って来なさい”と言うので向かってみると、先程、泥酔してトイレの前で嘔吐していた男性が、意識がなくなりピクリとも動かなくなっていらっしゃいました。救急車は呼んだそうですが、到着までの時間が不安で父が呼ばれたのだと分かりました。

確認すると、胃経が熱を持っているようです。

気が流れる道筋(=経絡)は、浅いところから深いところまで大まかに3段階に分かれています。浅い方から、経筋、正経十二経脈(五臓六腑の名前がついています)、奇経八脈 です。この方のように救急搬送が必要な状態の時は、最も深い 奇経まで乱れている場合が多いです。確かに、奇経のうちのひとつ、帯脈に異常がみられました。

経絡治療の基本は、浅い方から深い方へ。逆戻りは出来ません。ですので、先ずは正経十二経脈の一つである胃経と、対になって侵されていた小腸経の治療から始めました。 と言っても、何も持っていなかったので、力任せに経絡(ツボ)を押すという、原始的な方法しかなかったのですが…。

よほど怪しくみえたのでしょう。 最後の経絡を押す時には、側でみていた友人らしき方から、”これは何か意味があるのですか?”と聞かれてしまいました。軽く説明して、最後の経絡を押したところ、微動だにされなかったご本人が咳をしてうめきだされました。そのタイミングで救急車が到着。奇経が改善していたので、後は任せて立ち去ることにしました。

緊急時には鍼が効果的と、改めて思った一件です。